磁気光学効果を用いた磁場の可視化の最も単純な方法では、図2に示すように、光源と試料の前後に2枚の偏光子を配置します。
2枚の偏光子は、慣例として試料の前のものを偏光子、後のものを検光子と呼びます。試料と検光子を通った光の強度は、ファラデー回転角と偏光子の角度および検光子の角度を用いて
と表されます。
図3は、偏光子の角度を0度としたときの検光子の角度に対する光強度をプロットしたグラフです。偏光子と検光子の角度を直交条件の90度にすると、光強度は極小値をとります。この時、ファラデー効果による偏光面の回転が起こると透過光の強度は増加しますが、回転角の正負に対して、同様に強度が増加するため判別ができません。そのため、磁区を観察する場合には、検光子の角度を90度から数度ずらすことによって、ファラデー回転角の正負が明暗のコントラストとして得られるようにします。
この方法は、偏光子と検光子をほぼ90度とすることから直交検光子法と呼ばれます。楕円率の測定をする場合には、右回りと左回りに対する吸収が異なる、いわゆる磁気円二色性を利用します。この場合、最も簡単な光学系としては、光源と円偏光板(または偏光子と1/4波長板)となります。
磁区の観察を例に、具体的に説明します。図4は、ファラデー回転角およびファラデー楕円率を利用した磁区構造の方法の原理を説明しています。
(a)のファラデー回転角の場合、入射光は直線偏光を入射すると、磁区の方向に依存して偏光面が左右に回転して透過します。このとき、片方の磁区を透過した光が遮断されるように検光子を配置すると、反対向きの磁区を通り抜けた光の偏光面は透過することができます。その結果、磁区の方向が明暗によって観察できるようになります。
一方、(b)の楕円率を利用した場合には、入射光を円偏光とすると、磁化の方向によって吸収が異なるので、磁区が明暗のコントラストとなって観察されます。この場合は、図を見れば明らかなように、検光子は必要ありません。しかし、このままだと吸収の強弱を見るだけであるので、一般的にはコントラストが低くなってしまいます。そこで、高いコントラストを得るために、左右の円偏光による画像を取得して差分をとる必要があります。